バス

一年前、まだ私が学校に通っていた頃にバスの中で見た女性のことを思い出した。制服を着ていたので高校生だ。でも、「女性」という言葉がよく似合う人だった。

少し短い髪、綺麗な切れ長の目、通った鼻筋、長く華奢な手脚。赤いマフラーが似合う凛とした静かな人だった。バスの中では読書をしていた。ほとんどの高校生が携帯の画面しか見ていない中、読書をしている彼女の姿に一目惚れしてしまったのだ。その日は一日中彼女のことを考えていた。

一年経った今ではそのバスに乗ることもない、通学すらしていない。今でもあの人はバスの中では読書しているのだろうか、そんなことを考えながらまた天井を眺めている。