夢(未完成)

まだはっきりとしない意識の中で鳴るアラームの音、それを聞き続けていくうちに意識は鮮明になる。その間に今日が来たことを知り、私はベッドの上にある右から2番目の突起を押してその音を止める。それから目を閉じたまま手が届く範囲にあるものをひとつずつ…

横たわって自分の体の重さを自分で感じて、その重さにまた憂鬱になって寝返りをうつ。地元で1番顔が可愛い子の名前でメイドさんになってみたい。そうすることで殺せる感情がある気がする。そうすることで失うことができる私がいる気がする。体ごと空っぽにし…

真っ赤な

楽しいことだけを考えて生きていこうよ、例えばつまらない冗談を言っては私たちを苛立たせるあの英語の先生が風船みたいに膨らんでいって空中で弾けて肉片が散乱している教室でセックスしようよ。先生の肉で教室が真っ赤になった瞬間、僕の隣に座ってる君は…

教室の掃除用ロッカーで眠っているせみちゃんへ

私は、あなたがあの子に閉じ込められたんじゃなくて、自分からここに入っていったのを知っています。下駄箱に泥を入れたのも、トイレに閉じ込めて水をかけたのも、上履きに画鋲を入れたのも、机に花瓶を置いたのも、全部せみちゃんが自分でしたことだって、…

インターネットの

私はきっと最低です。最低だから、日記を続けて書くことすらできません。「さえ」と「すら」の違いすらわかりません。何一つ文脈を知りません。嫌いな人の悪口を好きな人と言いながら、好きな人に嫌われることをなによりも恐れています。好きな人に嫌いと言いま…

無題

指の皮膚のやわらかいところを噛みちぎる。鉄棒で出来た手のひらの豆が潰れたとき、1番に誰のところへ行ったんだっけ。鉄はいちばん赤に近いはずだから。土下座って全部濁音だね。感嘆符の数だけ存在する愛、を反語的に伝える、ことが確かに許されている世界…

1/19 架空日記

朝起きると顔に付いていた”見える目ヤニ”を必死で追いかけていたところ、肥大化してしまったので、治すために鏡を1時間以上見続ける必要があった。私はずるをしようとたまに目を逸らしてしまったので、”見える目ヤニ”が元の大きさに戻るのに時間がかかった。…

9/3 架空日記

朝起きると隣に死にかけの野ウサギがいたので洗濯機に入れて様子を見ることにした。目を離した隙に野ウサギが洗濯機のなかで嘔吐したので洗濯機を洗濯機の中に入れて洗おうとしたけれど、洗濯機は洗濯機のなかに入るのを拒んで体を捻らせたり洗剤投入口を開…

終わらせない物語(夢のために)

まだはっきりとしない意識の中で鳴るアラームの音、それを聞き続けていくうちに意識は鮮明になる。その間に今日が来たことを知り、私はベッドの上にある右から2番目の突起を押してその音を止める。それから目を閉じたまま手が届く範囲にあるものをひとつずつ…

流れ

日が暮れて暗くなった自分の部屋で詩を読んだ。ひとつずつ拾っていく文字がゆっくり連なり意味をつくっていくことを流れていくことを、わたしは知った。それは発光ではなかったけれど、太陽に照らされた月に照らされた私たちだ、地球だ、と思った。そのうち…

ふわふわ

‪滞ったふわふわがぼくたちのあいだで結晶しはじめたので、いつのまにかぼくたちはくっついてしまった‬。 ‪ふわふわは髪を、歯を、骨を溶かした。物理的に骨抜きになってしまったぼくたちはふわふわに従うように、ゆっくりと時間をかけて溶け、そしてまたゆ…

八月

そこは八月。私の脳内ではボリュームを絞った蛍の光が流れている。私だけを残してそこは八月、だったのだ。 私の葬儀では、生前私が言っていたように、私の好きなお香が焚かれ、式場の中はゆらゆらとした雰囲気が漂っている。一面に私の好きな花が置かれてい…

はて

反射する白に汚された朝のなかで 貧血ぎみなきみを想う くたくたになった光が まあたらしい背骨を撫でていく 幸せはいつもすこしだけ 言葉以外の何かに似ていて、 それに気づくとき 懲りずにぼくは泣いてしまう 言語化できない幸せは孤独だから、 ぼくたちに…

7/10 架空日記

カッパを着たヤンキーに睨まれる。家から100mくらいのところで迷子になる。めずらしく雨。この間買ったピンク色の傘をさしてみる。とくにテンションはあがらない。 図書館に行くたびに甘めの頭痛におそわれる。安い香水のにおいがする車内を思い出し吐きそう…

内側

具象を捨てて、自分を騙して、髪の毛食べて、腕を繋いで指切って。夏が来る前に溶けちゃった。永遠はつまらん、これだから。 愛を呼んだら赤ちゃん出てきた。おっぱいふくらんで初恋がしぼんで、微熱。ながい春休み。わたし冷蔵庫になりたい。

もっか(い)

小学生のとき、わたしは賢かった。ほとんどのことはなんでもできた。毎年学級委員長になった。音楽会ではピアノを弾いて、生徒会役員にもなった。それはとても楽しいことで、わたしはいきいきとしていた。 今考えるとでもそれは、それ自体が楽しかったのでは…

(?)存在

胸が痛くなった。なんでそんな言葉が存在してしまって、そんな事実で私なんかが困ってしまうんだろう。今までと同じように知らん顔で歩けば、このまま忘れられる、それだけなのに。ああ、疲れた。口に出すと楽になる。それ、ほんとう?口に出すだけで少なく…

熱のない、

カルキの臭いが満ちた密室で君が倒れていた。まだ僕の知らない記憶が壁にぶつかって反射しているこの部屋で、僕は深く息を吸った。もしもこの部屋に水を張ったら、君は浮いて僕は沈むだろう。なんとなく、そんな気がした。静かに部屋が揺れた。僕もこの部屋…

3 6 . 4

36.4度の熱。体温計を凝視し、自分が熱を持った生き物だということを確認する。首に手を当てると、手を離したあとも手形がつくようにそこだけ温度が下がった(気がした)。こんなに春なのに冷え性は治ってくれない。 36.4度…いい数字だなとぼんやり考える。デ…

🌸

はるちゃんと遊んだ。はるちゃんは髪が赤くてやわらかい。いつ見ても華奢で、中学校に入ってからかけだした茶色い縁の眼鏡がよく似合っている。はるちゃんは天然で純粋でおかしい。正午に「今日の昼から遊べる?」と言ってくるし、右と左がわからない。感情が…

一度、今好きなものがいつか好きじゃなくなるのが怖いと泣きながら話したことがある。その人は「そう思っているうちは大丈夫」とかなんとか言って私を慰めてくれたけれど、私は余計訳がわからなくなって泣いた、ことを急に思い出した。あの時好きだったものに…

怖い夢を2つ、見た

⑴インターホンが立て続けに鳴る。ただ事じゃない、とカーテンの隙間から見てみると作業服を着た知らない男が一人。継続して鳴るインターホンと体格のいい見るからに怖そうな男に怯えながら見守っていると、男をじっと見ている男の子が2人、自転車を押しなが…

全然白くない部屋

私の部屋は正しい人々が作った正しいもので溢れている。正しいとか言ったらぶん殴られるかもしれない。それでもみんな正しい。正しい創作物を纏う私はいつも空っぽで取り繕っても正しくはなりきれない。ペンキだけ塗り替えられた錆びた建物みたいな、なんだ…

黄色いあひる

湯船に今日の出来事をひとつひとつ浮かべる。手が思うように動かないのであひるの子どもは沈んでいってしまう。私は何も出来ずに沈んでいくあひるをじっと見る。塗装が剥がれかけて、目のくぼみが露出しているあひる。考えたくない考えたくない考えたくない…

日記 ⑵

猫に餌をやっているおばさんとおじさんを見かける。仲間に入れてほしかったので急いで車を降りてそこまで行った。が、おじさんとおばさんはいなかった。猫は2匹ともちゃんといたし餌も食べていたけど、1分でおじさんとおばさんは消えるものなの?猫よりおじ…

日記

嫌われる妄想をして得る快感。そんなに友達いたっけ、いたっけ…… 何回温めてもすぐに手と足が冷たくなるのと、骨盤が歪んでいるらしいので左の股関節が定期的に痛くなる。痛くなると歩けないので辛い。歩けないとストーブまで行けない。 合格発表の紙が張り…

仏壇

もしも大切な人が死んだらわたしはお仏壇をがちゃがちゃさせてしまうかもしれない。不自由させたくないから、目薬まで置いてしまいそう。ご飯も毎食しっかり生きているときの量をお供えしてしまうかもしれない。だってあんな量で足りるはずもないし。家に人…

🚻

トイレで泣くのが好き。真っ白で無機質な空間なら孤独がほんとうにわたしだけのものになる気がする。それに鍵もかけられる。こんな贅沢で純度の高い孤独を味わっていいのだろうか。家にはわたしひとりなのに。 トイレットペーパーをぐしゃぐしゃにして顔に押…

アナウンサー

朝目を覚ますと○○が隣にいる…はずもない。 君はとっくの昔に起きて今日もトイレで誰かと話をしている。君の言う〝馬鹿みたいな奴ら〟みたいにゲラゲラ笑って。 わたしはスリッパを履いて目をこすりながら洗面所まで行く。今日もきっと何もないだろう。長期休…

食事

耳栓をして食事をする。脳で咀嚼音が広く響く。投げやりに飲み込む。空気も一緒に飲みこんだせいで胸がつっぱった。音は頭から背中まで真っ直ぐ伝っていく。 茶碗いっぱい米を食べ終わったあと俺はどうしようもなくなった。ほんとうにどうしようもなくなった…