熱のない、

カルキの臭いが満ちた密室で君が倒れていた。まだ僕の知らない記憶が壁にぶつかって反射しているこの部屋で、僕は深く息を吸った。もしもこの部屋に水を張ったら、君は浮いて僕は沈むだろう。なんとなく、そんな気がした。静かに部屋が揺れた。僕もこの部屋みたいにやさしく君を揺さぶって起こしてみたかった。ゆっくりと溶けながら形成されていく幸せを認めながら、迷いたかった。