もっか(い)
小学生のとき、わたしは賢かった。ほとんどのことはなんでもできた。毎年学級委員長になった。音楽会ではピアノを弾いて、生徒会役員にもなった。それはとても楽しいことで、わたしはいきいきとしていた。
今考えるとでもそれは、それ自体が楽しかったのではなく、人に認めてもらうことがうれしかっただけで、逆にそれ以外のことはうれしいと思わなかった。
わたしの親は優しくて、そんなわたしをいつでも褒めてくれた。「自慢の子よ」
他の子は?「ばか」「あほ」「まぬけ」「あなたはそうじゃなくてよかった」
わたしはそれになりたくなかった。こわかった。一番こわかった。人の目が、人の目が?多分、ママとパパの目が。
小学校の最後、わたしは中学受験をした。うちは裕福ではないから、公立の。
他の子よりたくさん勉強した。
受かった。
でも、まともに通えたのは1年。
わたしはつかれてしまった。まともに息も吸えなくて、吐けなくて、一日を寝てすごした。
2年間、いろんなことをした。
昔の自分が一番いやだと思っていたこと、身体に悪いこと、人に怒られること。人を巻き添いにして自分を殺して、毎日を空白にしていった。
それでも生きているからすごいんだけど、それでも、やっぱり後遺症(これはある種の後遺症だと思う)は大きくて、そのときもう死んでいる予定だった未来のわたし、つまり今現在のわたし には抱えられなかった。
でも、それでも、こうなってしまった今でも、小学校6年間で少しずつ形成されてしまった立派なプライドは残ってしまっていて、何も出来ないわたしには、それは、あまりに大きすぎて、それが足枷になって、現実が、それと程遠い理想が、つらい。
やり直せるなら、いつからやり直そう。もうやり直したくもないかもな。
わたしは、
足がはやい子になりたかった。